『中部電力70年史』編纂のクリエイティブディレクターをやってみないか、と声をかけられたのは3年前でした。40数年の社会人生活では、広告の制作や創業者の一代記執筆などおもしろいものをつくるのが仕事でしたので、年史などというお堅いものは未経験でした。それに3年後の刊行時点では71才です。その年まで制作現場で生きているだろうか。迷いましたが、お受けすることにしました。中部電力さんには、TVコマーシャル制作やキャンペーン企画などで長年お世話になってきましたし、新しいことにも挑戦したい。
いざ取り組みはじめると、大いに勝手が違ってオロオロするばかりでした。年史づくりは、できる限り史実に正確な客観的記述が求められますし、社内外各方面への気配りも欠かせません。
唯一、自信を持って?担当できたのが、各章末にインサートした社員の皆さんのエピソード制作でした(下の写真右ページ)。取材から執筆まで合計27本の制作に半年かけましたが、これはこころ安まる現場作業でした。ささやかですが、一人ひとりの社員の皆さんの仕事への思いや悩み・喜びなど、体温を伝えるお手伝いができたのかなと思います。
中部電力さんやスタッフの皆さんの足を引っ張り続けて3年。2021年10月、あまたの波乱の末に完成したのは、800ページを超える、漬物石並みに重い本でした。「結構リッパじゃないか。しかも、このオレも71になっても、まだかろうじて現場で生きている」。
ありがたいことです。この場を借りて、中部電力のご担当者と制作・編集スタッフの皆さんにお礼とお詫びを申し上げます。特に、イヤな顔ひとつせず支えてくださった出版文化社の編集担当山本さん、ありがとうございました。申し訳ありませんでした。でも、ここまで来たら、目指せ!生涯現役。これからもよろしくお願いいたします。
【追記】この70年史が、2022年11月、日本経営史研究所の「第23回優秀会社史賞」を受賞しました。いままで広告賞は海外含めいくつか受賞してきましたが、出版物でもいただけたのはクリエイティブディレクターとして望外の喜びでした。(もちろん、山本さんはじめスタッフの皆さんの力があってこそですが。)
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